デジタル政策フォーラム

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デジタル政策フォーラム検討アジェンダ

近年、各国の選挙において行われた政権選択は、今後のデジタル政策の方向性にも大きな影響を与えると考えています。
この度、デジタル政策フォーラムでは、デジタルガバナンスのあり方を議論していくためのアジェンダについて、これらの状況を踏まえた新しいバージョンを策定ました。

詳しくはこちらをご覧ください。
検討アジェンダ(2024年12月発表)

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#25 2024を振り返る
谷脇康彦(デジタル政策フォーラム代表幹事)

2024年12月26日

 デジタル政策フォーラム(DPFJ)の2024年の活動を振り返りたい。まずはDPFJ初の書籍「デジタル政策の論点2024」の発刊。「デジタルガバナンス」を特集テーマに12名の有識者が語るデジタル政策を巡る多様かつ最新の論点が収められている。通読するとデジタル政策を巡る検討課題の多くが暗黙裡に関係者間で共有されていること、そしてそれらの課題が相互に深く関連していることに気づかされるとともに、デジタル政策の枠組みを俯瞰的に捉えることの重要性が浮かび上がる。同時期、「デジタル政策の教科書」153冊のリスト化も行った。デジタル政策という領域での知のリスティング作業は初の試みだったが、最新の政策フロンティアの議論もその多くは古典的な書籍に根ざしている部分が多々あるという示唆は意義深く、特に若い人たちに参照していただけるものと期待している。

 さて、上記の書籍でも特集テーマに掲げた「デジタルガバナンス」について、データガバナンス、AIガバナンス、セキュリティガバナンスの3つの領域に分けてDPFJにおける2024年の活動実績を整理してみる(下図参照)。

 第一に、データガバナンスの分野では、DSA(データ社会推進協議会)と連携して提言「データ駆動社会の実現に向けた総合戦略の推進」を公表した。本提言ではデータ主権(data sovereignty)の確立に向け、政府内におけるデータ戦略を推進するための組織の設置、データ駆動関連技術の社会実装の推進、データ駆動社会の実現に向けた総合戦略の策定の3項目を提案しており、その一部は自民党デジタル社会推進本部の提言「デジタル・ニッポン2024」にも「プロセス指向のデータ戦略の構築」として盛り込まれた。また、分散型データ連携であるデータスペースの構築に向けたデータ連携基盤の構築とトラストサービスの制度整備の必要性を訴える提言「データガバナンス戦略の推進」をまとめた。この提言の取りまとめに際しては、上記のDSA及びJDTF(デジタルトラスト協議会)と連携・公表するとともに、本提言に関するオンラインセミナーも開催した。本提言と相前後して経団連が「産業データスペースの構築に向けて」と題する提言を公表したこともあり、産学官の関係者が一体となって取り組む機運が高まっている。欧州のデータスペース関連の動向に遅れをとらないよう、日本初のデータスペースの構築に向けてDPFJとして積極的に取り組んでいきたい。

 第二に、AIガバナンスの分野では「AIガバナンスの枠組みの構築に向けて」と題する提言(Ver1.0/Ver2.0)を策定・公表した。Ver1.0ではAIガバナンスを巡る議論の枠組みを整理しつつ具体的な論点をその枠組みの中で整理した。続くVer2.0ではAI分野でハードローを含む制度整備を行う場合の検討の方向性(AI基本法の策定並びに過度の規制の抑制)を試案として明確に示した。ちなみにVer2.0は、複数の有識者にインタビューするとともに十数社の企業ヒアリングの結果なども踏まえて策定している。なお、Ver2.0の策定に併せて、DPFJと国際公共経済学会との共催によるシンポジウムも開催された。このように他の団体等との連携をさらに深めつつ、DPFJとしては2025年にはVer3.0を公表することを目指している。

 第三に、セキュリティガバナンスの分野の議論は上記のデータガバナンス及びAIガバナンスを巡る議論(提言)の中で必要に応じて取り上げた。また、サイバーセキュリティに焦点を当てた企画として「サイバーセキュリテイアワード2023」を開催した。本アワードの問題意識は誰もが理解できるサイバーセキュリティ関連のコンテンツに光を当てることにあり、アワード2023では書籍・ウェブ・フィクションの3つの領域で初心者にもわかりやすいサイバーセキュリティ関連の優秀コンテンツを募集した。その結果、計59件の応募があり、最優秀賞として4点(書籍部門1点、ウェブ・コンテンツ部門2点、フィクション部門1点)を選定・表彰した。この取り組みを通じ、サイバーセキュリティを巡るコンテンツも多様化が進むとともに、エンタメ性が高く、かつ一般のネット利用者に強く訴求することが期待できるコンテンツも数年前に比べると格段に増えていることが実感できた。今後もこうした優秀なコンテンツの紹介を通じ、サイバーセキュリティに関する普及啓発に努めていきたい。

 そして、DPFJは2024年を締めくくる提言「政権選択後のデジタル政策」を新たに公表した。世界60か国以上、世界人口の半分以上が政権選択を行った2024年を経て、2025年は各国で大きな政策転換が起きると認識している。デジタル政策も埒外ではない。保護主義的な趨勢に抗うデータの自由な越境流通の加速化、AIガバナンスを巡る自由主義国家と覇権主義国家の相剋、能動的サイバー防御を含む国レベルの包括的サイバー抑止戦略の策定など、重要な検討すべきアジェンダを俯瞰して整理している。また、本提言には2025年以降のDPFJの検討アジェンダ(更新版)も併せて掲載している。このアジェンダを基にDPFJとしてデジタル政策を巡る議論を更に深めていきたいと考えている。